ここで初めて新宿ロフトプラスワンに行った時のことを書いたけども、東京に初めて来たのはそのもうちょっと前。当時勤めていた広告会社には何かデジタル的な展示会を見学に行くと申請して休みを取り、実際はベイNKホールで行われるパンクラスのメインイベント・バス・ルッテンVS船木誠勝を見るのが目的だった。そうだそうだ、おれにとっての東京というと、平野勝之の映像とかパンクラスの試合みたいに暴力的で猥雑でどこかロマンティック。そういうイメージだったのを久々に思い出した。
11月18日のHave a Nice Day!『Dystopia Romance』恵比寿リキッドルーム。途中から駆けつけてドアを開けるとちょうどハバナイの浅見さんが登場してきたところで、この日合計3回鳴らされることになる『Are You Ready?(Suck My Dick)』、そして『Forever Young』の1回目が始まるところだった。ハバナイを見るようになったのはこの1年の話。ドリーミーだけどその外周はチェーンソーの刃みたいなダンスミュージック、その音にボーカルの浅見さんがやたらと過剰なヒリヒリ感を叩きつけてくるのが印象的だった。格好良いけど、その苛立ちの理由はなんだろう。その尖った空気の理由はライブ数日前にアップされたこの動画を見てはじめて知った。
映像から伝わる「奇跡を起こす準備は出来ている」感。起きないかもしれない、奇跡だから。ただこれ見て18日行かない理由はないな、と思った。そして当日夜のリキッドルームには950人もの人が集まり、一年近くステージに立っていなかった内藤さんがマイクを握った。そのステージで“奇跡”が起きたのか、ハバナイを一年足らずしか見てない自分は判別しかねるけども、浅見さんはじめメンバー4人があんなに楽しそうに立ってるハバナイは初めて見たし、何より自分が楽しくてしょうがなかった。最前に突っ込む気力はなかったけども。リキッドの最前というと、新宿時代後ろから転がってきたサーファーの踵で後頭部バッコンバッコン蹴られまくった思い出しかないし。身長高いと大変なんですよ。
11月はほんとライブの当たり月というか、ここ数年自分のものの見方を変えられたクラスのグループが大集合で総進撃な月だった。行けるだけ足運んでいるアイドルネッサンスやStereo Tokyoはもちろん、二階堂瞳子率いる革命アイドル暴走ちゃん『Rebirth』、『大家帝国主催興行~マッスルメイツの2015』などなど。それでふと思い出した。あー、そういえば自分の好きなものって暴走ちゃんとかマッスルみたいに暴力的で猥雑でどこかロマンティックだったんだ。要はずっと昔から変わってない。ハバナイやStereo Tokyoだってそうだ。アイドルネッサンスだって、あの真っ直ぐさやひたむきはもはやちょっとした暴力だ。……それはちょっと強引か。
ただどれも共通するのは、どれもステージ上とフロアの境界、またはノンフィクションとエンターテイメントの境界がなくなる瞬間があり、その時どえらい光を放つものであること。ステージとフロアがひとつとなってステージを作る、といっていい。フロアにメンバーが飛び込んでくるStereo Tokyo。最後に客がステージに立ち、演者が客席に立つ大移動が起きる暴走ちゃん。そんな形式だけの話ではなく、『大家帝国主催興行』メインの棚橋弘至への巨大なブーイングの中での試合の熱狂は、確実にレスラーと観客が高熱で融け合ったからこそ生まれた空間だった。で、だいたいこの辺のジャンルって世間から「低俗」と言われがちなとこでもある。ただ、ツイッターとか見てるとみんなもう低俗じゃないですか。そんな中で「高潔な低俗」というものがあって、そこだけが放つことができる光というものも確実にある。むしろ今はそういうものしか美しい光は放てないんじゃないのか。品の良さそうなのって皆もう叩く気マンマンだし。
クラウドファンディングなどを活かして、ネットの中、そして実際のフロアに大きなモッシュピットを作りだしたハバナイ。ヲタクやアングラという自らが触れてきたカルチャーと作法をもって世界を獲りに行く暴走ちゃん。内から外へ、突き破るのではなく、まるでゲームの『塊魂』のようにいろんなものを巻き込んでいく人たち。浅見さんや二階堂さんらひとりの中から生まれたロマンティックで暴力的なくらいのパワー*1が、その突進力をもっていろんなものを内に包んでいくがゆえにストーリーが生まれていく感じがイマドキというかこれからなんだろうし、これが出来る東京ってやっぱ面白いなあ、とあらためて思う11月のもろもろでありました。
しかし40過ぎてこんなライブハウス通いするとは思わなかったな。ま、上京したの1999年だから、東京年齢はまだ16歳だよ。もう埼玉県民だけど。
*1:もちろん実際の暴力とは別ですよ。