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サイタマビーチ

フリーライターの大坪ケムタの雑記とかイベントとかもろもろです。

それでも、生きていかざるを得ない。/『伊藤くんAtoE』

本・雑誌 雑記

木曜はレギュラー出演中のパラダイステレビ「18禁企画会議生中継」でした。今回のゲストはボクシングの元フェザー級日本王者で現在はAV男優の雄二ゴメスさん。【ボクシング元日本王者がアダルト男優デビュー | 東スポWeb – 東京スポーツ新聞社】サウスブロンクス出身で7連続初回KO勝ちで股間のビッグマグナムは25センチ…。通訳付ということで、最初はどれだけ喋れるんだろう? 番組どんな空気になるかな? と思ってたら、出る言葉は「キモチイイ」とか「カワイイ」とか思い返してみるとほとんどピロートークぽい単語ばっかりなんだけど、どんどんフレンドリーに出演者に絡んでいって率先して女優さんに指フェラしてもらったりと、これまでにない盛り上がり! ほとんど通訳さん出る幕なし。

その場の空気を楽しむ姿勢に「なるほど、これがリアルなラテンノリってやつか!」と思いつつ、声に可愛げというか愛嬌があるんだよな。帰って調べたら同じ歳だった…。佐賀県生まれじゃサウスブロンクス生まれに勝てないよ! いやー、これほどどこ行ってもウェルカムな雰囲気にさせるような「絶対的な人気者」ってひさびさに見たかもしれない。終わってから、女性以上に男の出演者が声揃えて「いやー、もし誘われたら抱かれてもいいって思うよね。ベッドですげえ優しそうだし…(うっとり)」って言うくらいの惚れっぷり。

序盤の2時間でゴメスさんは出番終了だったのだけど、いなくなってからの喪失感と残された者の戸惑い、なんか似てるなと思ったら映画『桐島、部活辞めるってよ』だ。みんなの人気者が忽然と消えてしまう感じ、きっとこれだよ。ゴメスは桐島だった!

リア充」「イケメンは除く」、あとちょっと前なら「オワコン」か。こういう言葉を使う人って、本人は客観的なつもりなんだろうけど、その「リアル」「イケメン」「終わった」って結局その人の枠でしかないよね? 勝手に自分の基準で考えて「俺はそこの立場とは違いますよーむしろ笑ってやりますよー」といったアプローチにしか見えなくて、この辺の言葉を嬉々として使う人とは仲良くなれないだろなあ、と思っている。実際周りにはいない、たぶん。

批評する側の位置に立った気になることで、その時はいい気分になるんだろう。でも実際のところ、充実したリアルは楽しいし、イケメンでもいい奴はいっぱいいるし、終わったコンテンツで面白いもんは腐るほどある。というか自分が満足して生きてれば周りがイケメンとかリア充とかすこぶるどうでもいい、それだけの話で。その「自分さえ」と胸張って言える自信がない人が、向かい側を区切ってネット内多数派になったことで勝った気になるんだろう。でも、その姿は「枠で区切ってるつもりが、自分がその枠に囲まれている」ようにも見える。

「○○なんて…」と見下すことは、そこに自分が行けなくなる事を意味する。自分から経験を広げる枠をバサッと切って、何が楽しいんだろう。「経験がないから経験することの意味がわからない」というのなら仕方ないけども。

ここ数年でおそらく一番新作読んでる柚木麻子の小説『伊藤くんAtoE』をやっと読了。気づいたら直木賞にノミネートされて落選してた、ざんねん。AからEまでの主人公が違う5章仕立てで、すべての中心人物は28歳で家が金持ちで仕事ブラブラして夢ばっか語ってとにかくモテる「伊藤くん」。半ば意識的に人間関係の立ち位置ゲームの巧者であろうとする者。ほんとネットで見る「リア充」「イケメンは除く」「オワコン」を使いたがる典型のような人。俺基準では伊藤くんが十分リア充でイケメンなのだけど、どう生きようと伊藤くん自身の中に「充実」はない。ただただ、傷つけられないように生きていく。

AからDまでの4章はこれまでの柚木作品同様の卓越した文章で女同士の生臭い交流が、いつもより厳しめで描かれる。全体的には各章の女主人公たちの中にも伊藤くん同様「自分を守る」というところがあり、意識的かつ残酷で読んでて痛い痛い。それでも、4章まではいつもの柚木作品の流れだったのが、最終章のピークを過ぎた女脚本家の話でちょっと違う空気になる。一生自分の批評家きどりの立ち位置を崩したくない伊藤くんと脚本家の対話がとても今のネット上の裏側の心理を見るかのような雰囲気だ。

「誰からも下に見られたり、莫迦にされたり、笑われたりしたくないんです。傷つける側に立つ側に立つことがあっても、その逆は絶対に嫌なんです」

こんな言葉が次々ブチこまれる最終章は、それまでの4章、というかこれまでの柚月作品に比べると、ちょっとガタガタしてる。ただ、ここに出てくる「同時代の言葉」は今までの柚木作品にはなかったなんじゃないかな。今までの柚木作品では『けむたい後輩』がベストだったけど、刺さる感じはこっちが上だなあ。

経験をする人間が、経験しない人間から嘲笑される。それってなんか違和感がある。でも、もうそういうのは仕方ないんだろうな。人の前に出ること、表現することは笑われること。何をしても自分の立ち位置を意識するためだけに嘲笑する者はいる。「何もしない者」こそが最強の殻だ。減点制がその人のルールならば。
 
ただ、ゴメスさんのような「絶対的な人気者」に会うと、そういうのは全部バカバカしくなってくるね。羨ましい、とか妬ましい、ってレベルじゃない。ただ出会ったことが良い経験、とこちらが思わされる凄玉。人によっては「ああはなれない…」と凹む者もいるだろうけど、「なれるわけないじゃん」て話で。自分はそんな好人物に会えたことを感謝したいし、やっぱ「経験する側」に踏み出した方が人生愉快だな、とこういう時納得する。
 
守り続ける減点制より、自分で取りに行く加点制の方が見えない世界が見えてくるルールで楽しいんだよな、やっぱり。どこまでいっても自分は「どこかで見た誰か」になることはなく、自分は自分にしかなれないわけで。時に脇から零れ落ちようとも、自分の砂山を積み上げていくしかない。いやでもあのラテンなノリ、羨ましいよなあ。20代の頃ならあのテンションを飲み会で挑戦してひどい目に合ってると思います。
 
 

筋肉少女帯_踊るダメ人間 - YouTube
1.24の筋少×BABYMETALも素晴らしかった。10代の頃ドハマりしてたものを40歳過ぎてアイドルとの対バンで見る。音楽もライブも長く見るもんです。

伊藤くん  A to E

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