一昨年昨年と参加したネットプロレス大賞。さて今年も…と思ったのだけれど、考えてみると昨年前半までは「プロレスファンのライター」だったのだけど、昨年中盤から『Dropkick』に参加させてもらうことになって少なからずとも「プロレス仕事もするライター」になってしまった。これで「ファン」と言い切るのは無理があるなあ、ということで投稿はせずに個人的に今年のベスト的な項目を上げてみる。
MVP
1位 棚橋弘至(新日本プロレス)
2位 オカダ・カズチカ(新日本プロレス)
3位 中邑真輔(新日本プロレス)
最優秀試合
1位 10.8新日本「KING OF PRO-WRESTLING」棚橋弘至vs鈴木みのる
2位 8.18DDT「武道館ピーターパン」飯伏幸太vsケニー・オメガ
3位 8.5新日本「G1 CLIMAX22 4日目」矢野通vs鈴木みのる
最優秀タッグチーム
1位 GET WILD(大森隆男&征矢学)
2位 バラモン兄弟
3位 伊東竜二&塚本拓海
新人賞
1位 成宮真希(アイスリボン)
2位 安川惡斗(スターダム)
3位 竹下幸之介(DDT)
最優秀興行
1位 8.12新日本プロレス「G1 CLIMAX22 優勝決定戦」
2位 8.18DDT「武道館ピーターパン」
3位 8.3新日本プロレス「G1 CLIMAX22 2日目」
最優秀団体
1位 新日本プロレス
2位 DDT
3位 全日本プロレス
最優秀マスメディア賞
1位 G1 CLIMAX22の山手線広告展開
2位 真夜中のハーリー&レイス
3位 小森美果(AKB48)
昨年に比べてばらつき弱いなー、ライオンマーク一色だなーと自分でも思うけど、実際面白かったもんは仕方ない!MVPは結果だけ考えるとオカダなんだろうけど、この前の1.4の最後の棚橋のマイク「だから、もうちょっとだけ、棚橋王者時代にお付き合い下さい」が実に切なくて、2012年の棚橋を振り返ってみてるうちに「やっぱ2012年を引っ張ったのは棚橋だなあ」という気分になってしまった。今の棚橋はちょっと夕暮れがかった、いい色の太陽なんですよ、ほんと。
前に「レインメーカーがよくわからない」という人(&自分)向けに記事一本書いてみたのだけど、実はそれ以上に多いのが「棚橋がよくわからない」な人なんじゃないだろうか。特に桜庭効果で新日見るようになった人はなおさら。
「愛してま〜す」「100年に一度の逸材」「太陽の天才児」「いままで疲れたことないですから」…こうしたキーワードに加えてあのビジュアル。たしかに棚橋は「見栄え」はいい。プロレス未見の、特に女性には分かりやすそうだ。しかし、喋りでいえば真壁、運動能力でいえばオカダや内藤、いろいろ面白さでいえば中邑といった、特に男好みする「ズバ抜けたひとつ」が棚橋には薄い。だから先のキーワードこそが棚橋の魅力と思いこんで見てしまうと「どこがいいんだろうなあ」と感じてしまうはず。
実際の棚橋の魅力は、そうした派手なキーワードとは真逆にある浪花節的なところだ。自分が「あれ、棚橋面白くない?」と新日をあらためて見るようになったのが、2007年11月のvs後藤戦。その身を削る試合に「チャラいだけじゃないんだな」とイメージを変えられ、その翌年には怪我を押しての全日チャンピオンカーニバル参戦と「滅私奉公」という言葉が浮かぶほど新日復活にひたすら挑む姿にガラリと印象を変えられた。「123ダー」でも「ストロングスタイル」でもない「新生・新日」を満身創痍でアピールする姿。
それははっきりいって「クサい」。しかし浪花節だろうと判官贔屓だろうと好き嫌いを問わず支持したくなる姿があった。というかプロレスてそういうもんでしょ! ただそんなクサさ・泥臭さとは真逆そうな棚橋がやるからこそ、チャラい言葉が反語としてしみ入る。それにただ言動がクサいだけでなく、ベストバウト候補に上がるクラスの試合を毎年残してるのも事実なわけで。
それから2008年以降、真壁に内藤そしてオカダといった内部の台頭に、鈴木に小島・TAJIRIなど外敵の侵略と充実していく新日本。これらとの闘いをしのぎつつ、やはり最後を「愛してま〜す」で締めれる棚橋の姿は「新日本プロレスの座長」と呼ぶにふさわしいものがあった。棚橋の魅力とは試合ひとつをポンと見せられた時より、今の新日の構造全体が見えた時にあらためて「すごいなー」と感じるところがある。そのあり方はエースとかリーダーというより「座長」ぽい。特に三銃士ですら締めは「123ダー」だったのに、その引力を「愛」で完全に振り切ったという事実。実はこれはかなり大きいことだと思う。
そして2012年。先日の1.4のオカダ戦に関していえば、オカダの試合でいえばvsアンダーソン戦やvs内藤戦の方が良かったと思う。しかし、それも2月のIWGP戦で棚橋が「オカダってこういう選手ですよ」というプレゼンに成功したから。そして後半の鈴木みのるとの対戦ではオカダら新世代に見せつけるような(そして鈴木は桜庭や柴田らに見せつけるような)格闘技もストロングスタイルも飲み込んだ最高のプロレスを見せた。「道筋を作る仕事」と「ベストバウト」、これが出来るだけの存在感と実績のあるレスラーは今のところ棚橋だけだ。
正直1.4はオカダが勝つと思っていた。しかし、たとえこの日オカダが勝っていたとしても、この日スタンド最上段までギッシリ詰まった東京ドームは誰が何と言おうと棚橋のものだ。チャラ男が決してチャラくない道のりで得た、完全勝利の証。そこにあの1.4のウェットなセリフはしみるんだよねえ。これから棚橋が見せる「もうちょっと棚橋時代」のための「あがき」は、新日を今の位置まで持ち上げてきた時とは違う充実の「あがき」になるはず。(あとは内藤が復帰すれば…)燦々と激しく照らしつける太陽から、少しだけ夕暮れめいた優しくも濃い橙色の太陽へ。今までとは違う魅力を放ってきそうで楽しみです、今年の棚橋。