サイタマビーチ

フリーライター/イベンターの大坪ケムタの雑記とかイベント告知とかもろもろです。

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アイドルネッサンスにまつわるわりと個人的な夏の記録

「うれしいね、好きでいてくれる人と歌うのは」。8月の終わり、スマホのメモ帳に突然書いてあるこの一行をみつけて、えーと何だっけこれ?としばらく頭にひっかかっていた。


ググっても出てこないし、とりあえず誰か2人にまつわる言葉なんだけどどういう関係性ならこんな言葉が出てくるのか、どうにも浮かばない。
 
それから数日、はっと思い出したのが7月30日のアイドルネッサンスのリリースイベント「君の知らない夏祭り」のこと。そこで行われたメンバーによるカラオケ大会で、「ずっと一緒に歌いたかったんです‥」と告白する原田珠々華の言葉に石野理子が返したひとことだった、はず。あらためてこの言葉を見ると、昔だったら「やっ!そんな!わたしなんか‥」と劣等感と謙虚が混ざり合った答えを返しそうな石野さんが、今はこんな風に受け止めれるようになったんだなあ、と思ってメモしたような気がする。あと単純にきれいな言葉だなと。今は自分がやってきた事に対しての評価を戸惑わずに受け止めれる。それはきっと、風の強い日も走ってきたから。
 
今年で3度目になるアイドルネッサンスの夏。1年目はデビュー数ヶ月で初めてのTIFに初めての定期公演(AKIBAカルチャーズ劇場・夏の新人公演)と初めてづくしの中に慌ただしく駆け抜け、2年目のは対バン出演イベントに真夏のリリイベと肉体的・精神的に厳しくも数段の成長を見せる飛躍の季節に。そして3年目。正直アイドルにとって3年目というと正念場の時期。フレッシュさで目につく時期は終わり、新規ファンの伸びも一段落。何かしらの起爆剤がないともうひと伸びは難しい。そのタイミングでの原田珠々華・野本ゆめかという2人の新メンバー加入、そして初のワンマンツアー、さらにニューシングル『君の知らない物語』リリースイベントという大きな3つと、TIFをはじめとした数々の対バンイベントが重なる夏になった。

新メンバー原田・野本のお披露目ライブとなった6月11日「アイドルネッサンス部 新体制お披露目するネッサンス!!」(ニッショーホール)以来に、自分がアイドルネッサンスを見ることになったのは7月27日のリリースイベント「渋谷の空に星が降るネッサンス!!」(渋谷マルイ屋上)。ここまでに6日間リリイベは経過していて、ニューシングルに収録された新曲発表などの明るい話題もある中で、見た人のツイートや公式発表からはメンバーの不調や、特典会欠席など不安な要素が漏れ聞こえてきた。27日のリリイベは、CDジャケットをイメージした星空をスクリーンに上映しての『君の知らない物語』パフォーマンスもあるということで、もともと行くつもりではあったけども、楽しみより不安が募る中での参加に。
 
そして当日。一曲目『君の知らない物語』、いつもならカウントから即歌い出す石野‥が声を出さない。新井乃亜の声で曲が始まった。いつもどおりの力の籠もった振り付けは変わらない、ただ石野の瞳は潤んでいるように見える。途中のMCで石野が喉の不調により歌えないことが告げられた。最初の噛みしめるような表情から、徐々に場に馴染むように表情を落ち着かせていった彼女。一瞬は心揺れても動じないのが彼女らの強さ、とはいっても見てるだけで辛い。ちなみにこの日は、ライブ前から百岡古宵も特典会不参加が発表されていた。満身創痍。
 
正直、3年目の夏は前2年よりは少し余裕があるのかな、と思っていた。特に現メンバーは。しかし、実際は立て込んだ日程の中に既存曲の8人バージョンの再振り付けに、ニューシングル+ツアー用新曲の7曲もあり、決して楽ではなかったはず。その中で新メンバー2人が見る度にパフォーマンスに溶け込んでいっているのと、ステージに立つ喜びを掴んでいってるように見えるのが救い。


その後のライブも石野は大事をとってボーカルを取らない体勢でのステージが続いた。そして7月30日、アイドルネッサンス1stツアー「君の街まで訪ねるネッサンス!!」初日(新宿BRAZE)。正直、「大事をとった」のはここから始まるツアー初日からのため。ツアー初日、いきなりの長尺のライブで喉は保つのか、そもそも完調なのか。不安なまま幕は上がり、一曲目は『トラベラーズ・ハイ』。心跳ねるキックの中から、爽やかな疾風のような石野のコーラスがステージからフロアに吹き寄せる。石野理子完全復活!数日前の声を出せない時の凍った表情が砕け散ったような、声を出せる喜びに満ちた笑顔を見ればこちらも全力で楽しめる。初日ツアーはそこからアンコール『夏の決心』まで20曲。代表曲『YOU』『Funny Bunny』『ベステンダンク』を外した思い切ったセットリストで、さらにツアー一発目の新曲は髭の『それではみなさん良い旅を!』と、夏のロックフェス的な躍動感で駆け抜ける、10代真っ只中の彼女らの今を見せる初のツアーにふさわしいものだった。
 
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ツアー初日の後、自分がアイドルネッサンスを見たのはTOKYO IDOL FESTIVALの3日間とスマイルネッサンスvol.18、それとSUMMERSONIC16'。TIFは3日間でベストと言われたHOT STAGEが見れなかったのは惜しかったけども、他のステージでのライブを見た限り「あの伝説を生み出してきたSKY STAGE」的な物語にはもう乗っからなくていいのかなと。もちろん活動としてはTIFみたいな場は大事だけども、個人としてはもっと長尺のライブが見たい。‥‥行くか! ということで8月27日大阪のツアーファイナル遠征することに。
 
大阪まで往復高速バス、しかも翌日の予定が決まってたのもあって朝7時大崎駅発で夕方4時に大阪到着してライブ見た後、23時なんば発のバスでトンボ返りの弾丸ツアー。移動16時間、滞在7時間。テーマソングは言うまでもなくクリトリック・リスの『BUS-BUS』、栄光に向かって走るあの列車には乗れない‥‥。それはさておき、さいわいにも梅田のバス停は会場のシャングリラ近くで、到着して近所の銭湯で一服して会場へ。前売も大概ギリギリで買っただけにチケットソールドアウト、会場から伸びる列も長い長い。入場の際にヲタ有志によるサイリウムが配られる。東京から来た遠征派も、大阪で待ちに待っていた人たちも、完全に空気が出来上がってる。これで350人くらいの箱って一番面白いことが起きる場だ。
 
セトリ的には他ツアーに準じたものながら、シックな真紅のビロード風のカーテンを背景に踊る白い8人はまた新宿とは違う品と情熱を感じさせるものに。この会場名なら絶対やるでしょ、な『シャングリラ』は石野新井ツートップからのスタートに歓声があがり、「旅」をテーマにしてきたツアー最後の新曲は奥田民生『風は西から』。なるほど大阪ファイナルにふさわしい一曲で、ここから続けての『それではみなさん良い旅を!』は男くささとメンバーの愛らしさのギャップが出るナンバーに。後半『夜明けのBEAT』『シルエット』といった昇天コースなロックナンバーでブチ上げてからのラスト『君の知らない物語』、そこでファンが用意したサイリウムが一斉点火される。いつもの力強い石野のボーカルにふわりと涙声が交じる。
 
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2年前の夏の新人公演千秋楽以来のサイリウム、あの日は「青」だった。これからアイドルシーンという大海にこぎだす彼女たちを輝かせるような青。そして今回は「白」。様々なものを乗り越えて高く高くたどり着いた天空のような星空の白。特に石野にとっては渋谷ではスクリーンの星空に照らされて歌うはずが歌えなかったこの曲が、今日は一面のサイリウムに照らされて歌える。その喜びはいかばかりか。

そしてアンコール1曲目『Dear Summer Friend』から、「まだ振り付けできてないんですが、どうしてもわたしたちが歌いたくて」と選ばれたツアー最後の曲はアカペラでの『FunnyBunny』。「君の夢がかなうのは誰かのおかげじゃないぜ/風の強い日を選んで走ってきた」*1その言葉に集約されるこの2ヶ月間の彼女たちの夏。モニターマイクに拾われて、結果的にちょうどよく生っぽさ残したままでライブハウス内に満ちたこの曲はツアーを締めくくる一曲として完璧だった。
 
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もう一度「うれしいね、好きでいてくれる人と歌うのは」という言葉に戻る。彼女らが歌う曲のほとんどは「思春期の曲」だ。それは自分が10代の時の、という意味ではなく「いろんな世代にとって、思春期の思い出として歌われてきた曲」が選ばれてるように思う。彼女らを知るきっかけはそういう「自分にとって大事な曲」だから、という人は多い。そんな皆の思春期の歌を受け止め、たしかなものとして歌ってきた彼女たち。そんな今のファンの思いも、これから出会うファンになる人たちの思いも「うれしいね、好きでいてくれる人と歌うのは」と笑顔で受け止めて前に進める自信と強さが今の彼女たちにはあるのではないのかな。ツアー最後の『FunnyBunny』に象徴される、こっちが「このくらいかな?」と思ってた「想像の100点」を「現実の120点」で打ち返してくるから凄ぇよ、彼女らは。
 
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とここまで書いておいて、メモした「うれしいね、好きでいてくれる人と歌うのは」てのがぜんぜん違うところのセリフだったらどうしよう‥‥と思ってる。中川ホメオパシーとか戸梶圭太とかさー。

*1:9/7、たまたま見に行った虹のコンキスタドールの定期公演でもこの曲がカバーされてて、その日のメンバーブログでこの歌詞を数人取り上げてたのは印象的だった。