サイタマビーチ

フリーライター/イベンターの大坪ケムタの雑記とかイベント告知とかもろもろです。

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BUBKA12月号の記事補足、そして「私は如何にして心配するのを止めてアイドルネッサンスを愛するようになったか」

先月末発売された「BUBKA12月号」でアイドルネッサンスの記事を書かせてもらいました。まあ後から「アレ入れれば良かった、コレも入れときゃ…」と不満が出るのはいつものことなので、それなりに納得もしていたんですが、自分をアイドルの道に引き込んだ張本人であるBUBKA編集のNさんからこんな感想をもらいました。「大坪さん、あの記事面白かったんですけど、大坪さんが僕らに語ってるような『今いかに自分がおかしくなってるか』みたいな話入れた方がもっと面白いですよ」と。あー、なるほど。それはたしかに。

アイドルにかぎらず、何かしらの紹介記事を書く時はヒットについての分析だけでもいいんだけど、まだ知名度の低いものについてなら音楽性や個性云々を書くより「今オレこんなにおかしくなってますよ!」と”熱そのもの”を書く方がよほど面白く読ませることが出来る。特に自分がハマってるものならなおさら。それは確かにそうなんだけど、まさにそこが俺の弱点なんだよなあ。

基本的に自分の内にそんなに個性があると思ってないので、文章で”自分”を出すのが本当に苦手なのですよ。というか「おれの思いとか行動とかそんなニーズないでしょ」と思っちゃう。そういう意味では、自分は「コラムニスト」にはなれるかもしれないけど*1、「エッセイスト」にはなれないなあと思ってる。ただ、たしかに”自分”を文章に入れた方が惹きつけるものがあるんだろうな、というのもよくわかる。

ということでBUBKA12月号の記事補足的に書いてみようか。いわば「私は如何にして心配するのを止めてアイドルネッサンスを愛するようになったか」。

アイドルネッサンスについて最初に書いたおたぽるでも書いたとおり、最初に「これはすごいんじゃないか?」と思ったのは、「アイドルネッサンス「17才」(Dance Shot Ver.)」を見たとき。
 

アイドルネッサンス「17才」(Dance Shot Ver.)
 
この始まって数秒で掴まれるギターサウンドと調和した前奏のダンス、そして白い制服に固定カメラというフラットな光景だからこそ伝わる彼女たちの躍動。これをステージでやってるんだったら、相当すごいんじゃないか? それに特にこのセンターの子のきらめきがすごいなー。そう思ってちょうど目前だったTOKYO IDOL FESTIVAL(8/2、3)で見ることを決める。

でも、その前日の金曜に定期公演(8/1)があるので、どうせならそこに行ってみようか。先に見とけばTIFでその分なんか見に行けるし…とその程度で考えていた。それがその結果、金曜の定期公演、そして土曜のTIFスカイステージ、日曜のTIFエンジョイスタジアムと、3日間通して行くほどドハマリすることに。いわば、いきなりの「17才」中毒。

そして自分の中に、これまでのアイドル鑑賞歴の中でもなかった”明らかな変化”が起き始める。それまでは基本的に握手会や特典会における”アイドルとの会話”が苦手だったんですね。というか今も苦手かもしれない。仕事柄、30分とか1時間人と話すことはさほど苦手でもない。5秒くらいなら間近に見れた上に一声かけれてちょうどいい。ただ、「20秒」とか「30秒」とか本当苦手だ。しかもさっきライブ見ただけの子らとか何言えばいいの! それこそ以前インストアで見たある7人組グループ、そこで「せっかくだから握手会行ってみようか」と並んでみたものの、まあ話すことなくて困った困った。それが7人、これは慣れてないとけっこうしんどい。特に認知も興味ないから、前のめりにもなれないし。

ただ、このTIFの最終日だと思うのだけど、アイドルネッサンスの面々に「あ、なんかすげえ良かったって事は伝えたいな」と思ってCD買って列に並ぶことに。話した内容はあまり覚えてないけども、「3日間行って楽しかった」「スカイステージ最高」「また来ます」を繰り返しただけだったろう、たぶん。

とはいっても「良かったよ」と言うために一度特典会行く程度はいままでもあった。ただ今回の場合、定期公演に3回4回と通う毎に「良かった」てのは言いたいな、と特典会に並ぶように。そのうち話す内容も変わりはじめた。何が変わったって「7人全員喋る内容を変えて話せる」ようになったこと! これは毎日更新されるYoutubeとブログ、そしてその日のライブ内容が頭に入ってるからこそ。というか入ってしまってるんだよオレ。それに気づいた時、我ながら思った。「あ、これはおかしいゾーンに入ってるぞ」そして「そんな状態が楽しいぞ」ということに。

例えるならば、どっかのゾンビ漫画か映画でこんなシーンがあったと思うのだけど、ゾンビに噛まれて半ゾンビ・半人間状態にある人が、我慢できず人間をバリバリ食いながら「今おれヤバいことしてると思ってるんだけど、美味くてしょうがないんだよう!!」と叫んでしまう感じ。(その後銃殺)とにかくこれは橋渡っちゃったぞ、と我ながら思ったわけです。

日々更新されるYoutube映像でも「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」初披露映像でキャー!て感じは今までもあったけど、何気ない「石野理子会議中」見てくねくねしてしまう感覚は今までないやつ。


「あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう」5:20~
 

ただ、前々から音楽ライター・宗像明将さんの特にBiSに対する取材姿勢というか距離感がすごいなというか羨ましいと思っていたところがあったのと、自分自信がアイドルという対象を仕事する上において「やっぱりここはキチンとおかしくなった方がいいな」と思っていたのもあり、ライターとかそういう距離感を考えないようにした。まあそんなご立派な立場でもないし、実際ライブ中は取材とか撮影するより、カメラとかメモ放っぽって声出してたいもの。

ただ「君らこんな面白いもん気づいてないの何なの」という上からな啓蒙視線がないとライターなんて商売はしてないわけで、「ちょっと取り上げましょうよ最高ですから!」と編集部に売り込みつつ記事を書きつつ、で現在に至るわけです。CDと生写真とタオルに囲まれて。



うーん、書いてみたけどあまり面白いかどうか判断しづらいな。やっぱこういうのは居酒屋とかでテンション高く話すから面白く見えるんだよ、Nさん!

と書いたところで、ついでにアイドルネッサンスのセカンドシングル『太陽と心臓』(オリジナル:東京スカパラダイスオーケストラ(vocal:ハナレグミ))について。

これまでの原稿なんかで「アイドルネッサンスで今最も『ルネッサンス』(原曲に今やる意味と新しい視点を加えてカバーする←俺解釈)度高い曲は『PTA~光のネットワーク』*2」と書いているのだけど、それとはまた違う意味で『ルネッサンス』してるのが『太陽と心臓』だと思っていて。

曲が新しいのもあって『PTA』や『初恋』のような、”この曲を今この時代にやる意味”はそれほど強くはない。ただ、原曲のボーカルがハナレグミだったのが10代の女の子たちに変わったことで、この曲の詞に込められた「生命力」の質が変わった気がする。ハナレグミの歌なら、既に太い幹を持つ樹に青々とした葉が茂ってるような強さを。それがアイドルネッサンスの場合、まだ土から飛び出たばかりの芽のような、でもその土がついた葉は生まれたてのこの瞬間しか見えないとびきり彩り美しい緑。そういう質の違う良さがあり、ボーカルが代わってもマッチしていると思う。

ただ、ここで歌われる歌詞のポジティブさの聞こえ方は大きく、もっといえば絶対的に違ってる。これはロックでも何でもそうなんだけど、30代や40代に「絶対○○」とか「一生○○」とか歌われてもすげえウソ臭いじゃないですか。もう「絶対」も「一生」もないことを知っている。ただ、それを「信じられる世代」が歌う時、そして「信じさせる強さ」がある時にだけ、そんな「絶対」や「一生」、さらにいえば様々なポジティブなワードが力を持つ。

ここで彼女たちが歌う「百年後には絶対俺たち神様になれる気がするよ/大きく生きてゆこう」という詞。いやまあそりゃムリなんだけども、ここで描かれた「絶対」、というより「絶対への意思」は信じたくなる強さがある。だからこの詞のところにくるといつも目に汗がじわるのです。

…というのに近いことを3年くらい前にも書いていた。後半の追記のところ。 「わたしはこの団体を誇りに思っています」−RIBBON MANIA 2012雑記【追記あり】 - サイタマビーチ シビれるところは変わってないですよ、40年も生きると! 

あとこのMVを見て初めて気づいたところ。サビの胸元で手をバクバクする振付、ここが「心臓」を模してるのはわかる。アイドルネッサンスの全曲の中でも一番か二番くらいに大好きな動きなのだけども。*3あとこの曲でいえば、曲の最後、全員集まって手をパーッとあげてからのヒラヒラ~、ジャジャン!てのも大団円、て感じで好きなんだよねえ。とか考えながら、そのラストをMVで初めて”真正面”から見て気づいた。あの全員ヒラヒラって「太陽」じゃん! 

「心臓」が集まって「太陽」となる。ならば太陽とはアイドルネッサンス自身。それをふまえてサビの歌詞を読み直す。「心配ないよ/空に太陽/からだには心臓があれば/生きていけるだろう」この「太陽」が彼女たち7人のことと考えると、これを歌ってるのはわれわれファンの側なのだよな。そして彼女たちによる「俺らと心臓があれば、生きていけるからついてこい!」という力強い宣言ともとれる。まあ、そんな「ついてこいおりゃー!」ってグループではないのだけど、この曲を聴くたび「君を信じてるよ/生きてゆけるだろう」とたしかに胸を張って思えるのですよ。
 

 

BUBKA (ブブカ) 2014年12月号

BUBKA (ブブカ) 2014年12月号

*1:おたぽるで書いてる「コドモとアイドル」みたいな毎回テーマを決めたコラムでなら”自分”も出せるんですけどね、というか最初からそういう文章なので。

*2:ユニコーンでもなぜこれ選ぶ」とか「パロディ曲なのに今単体で出されるとそう見えない」とか「こういう詞をリアル中高生が歌う事で聞こえ方変わる」とか、詳しくは『BUBKA』12月号で。

*3:あと『17才』『Good day sunshine』のサビとか超好き。